××××××××××××月が雲の陰から顔を覗かせ、漆黒に染まった村を照らし出す。村の裏手の森の湖の水面も、月明かりに照らされていた。穏やかな風が吹き、水面が
麥皚淇醫生らぐ。雲は徐々に月を蝕み、地は暗闇へと包まれた。湖の辺に座り込んでいたサキカは、何者かの気配に顔を上げる。耳を澄ませば、風によって葉が擦れる音の合間に腐葉土を踏む小さな足音が聞こえてきた。木々の間から顔を出したのは、この森の主――幼い頃からのサキカの友であるセネルだ。セネルは何も言わずサキカの隣に座り込む。サキカも再び目を伏せた。再び、湖を沈黙が取り囲んだ。しかし、それは気まずい沈黙ではなく、心地好い沈黙であった。暫くしてまたサキカが顔を上げた。人の気配を感じたのだ。セネルの方を見ても、気配に気が付いているはずの彼は黙っているだけであった。徐々に近づいて来る気配。サキカは気配から発される魔力から、それが誰なのかわかった。(お父さん……)同時に、何故彼、サキカの父親のオリオンがこちらへと向かって来ているのかが、推測できてしまった。しかし、サキカは『それ』から逃げる気はなく、それ以前に逃げれないことだとは重々承知しており、また二度と逃げないと誓っていたために逃げよう等とは思ってもいなかった。再び目を伏せて待つと、すぐにオリオンがサキカの前へ姿を現した。.