わっかの色はすべてことなり、鎖状に繋がった端から端にグラデーションを作り出していた。ただそれだけのオブジェなのだが、しかし美しい。そして規模があまりにも大きく、あのわっかの
透明質酸を真っ直ぐに伸ばせば、１kmはありそうだ。美術館の中は、西の国の有名な画家作の絵画や同じく有名な彫刻家作の彫刻等が大半を占めており、残りの約一割には子供の描いた作品が飾られていた。魔方陣技術館は、全体的に素晴らしかった。誰もが一度は目にしたことがあるであろう浮遊魔法の魔方陣から、サキカも一度しかめにしたことのない古代魔法の魔方陣まで、様々な魔方陣の仕組みについての解説がなされており、真剣に見て回ったら四、五日では全てを見て回ることは不可能だろう。充実した一日を過ごしたサキカたちは、使者の案内によって宿へと向かった。因みに、移動は全て車で、馬車ではなかった。連れてこられた宿もまた、目を引く外見をしていた。簡単に言えば、淡い黄色の巨大な円柱形だ。しかし、中に入ってみてさらに驚いた。円柱形だと思っていた建物は、真ん中がくりぬかれた形をしていたのだ。いわゆるドーナツ型と呼ばれる形に驚きながらも、落ち着いたシックなデザインの内装に、西の国の人々のセンスの良さを改めて感じたのだった。西の国で用意されていた宿の部屋の大半は四人部屋。サキカはガイアとレイトとアークと同じ部屋に振り分けられていた。こちらもイヴが適当に部屋割りを決めたらしたかったが、仲の良い者同士を故意的に同室にしたのだろう。理由は何であれ、同じ部屋になれたということは嬉しい。「サーキカ。チェスでもしようぜ」チェス盤を“ボックス”から取り出しながら誘ってきたレイト。サキカは壁にもたれながら読んでいた本を閉じ、顔を上げる。「チェス、ね。すごい久しぶりにその単語を耳にしたよ」ここ一月ほど、忙しい毎日を過ごしていたサキカたち帝やギルド隊員。暇があるときはギルドの自室に来たサキカが隊長をつとめる零番隊の隊員や帝とチェスやら何やらで遊んだりもしていたのだが、最近は忙しくてその言葉すら耳にする機会がなかったのだ。.
