往来する人々は、皆着物という民族衣装を身に纏い、話す言葉は東の国特有のジパング語のみ。建ち並ぶ家々は全て木製で、路地は土が踏み固められているだけだ。人々の身長は、大
HKUE DSEに住む人々のそれより平均して10cm低く、肌も浅黒い。顔の彫りは浅く、髪や瞳の色に黒が多いのが特徴的だ。「これが……、東の国」アークがポツリと呟く。――サキカは懐かしさのあまり涙が込み上げてきて、溢れないようにとしているのが精一杯だった。総帝として何度か足を踏み入れているというのに、ここに来る度に感じる心を直接鷲掴みにされて揺さぶられるような感情には、なれることができないでいた。「ニアン学園の、方デすカ？」片言のオルス語を話す着流しの男性が、こちらへと向かってきた。大陸から付き添って来ていた使者が、ジパング語で受け答える。「そうです。打ち合わせどおりお願いします」「わかった」ジパング語を話した使者――おそらくはどこかの国の者とのハーフ――に、男性はジパング語で言葉を返し、生徒たちと向き合った。「こコからは、私が引率しマス。ついて、来る、オ願いシます」片言であるが、意味は理解できなくはない。使者はどこかへと姿を消し、片言のジパングを操る使者らしき男性のみが残った中、見かねた男勝りな女性――担任のイヴがサキカを手招きした。呼ばれた理由を大体予測しながらも、イヴのもとへ着いたサキカは訊ねる。「どうかなさいましたか？」「通訳頼む」「…………わかりました」予想通りの頼みに、サキカは密やかに息を吐き出し、イヴの傍に立っていた使者とおぼしき男性に近づいた。.
