「……総帝様、だったんですね」

 「……総帝様、だったんですね」総帝の証である銀のマントを身に纏ったサキカに、ユリアスが目を細めた。「……えぇ。意外、でしたか」「ううん、ガイア君が炎香港婚紗攝影様だと知った時点で薄々気がついていました。炎帝様と仲が良いのは、総帝様だから。刀も使ってますし、氷属性は総帝様がよくお使いになる属性だし……」驚いた様子も見せない彼女に問えば、そんな答えが返ってきて、サキカは苦笑を漏らした。確かにそうだ。炎帝と仲が良い人物といえば、総帝である。「……俺が総帝と知って、幻滅しましたか」孤高の存在である総帝と『落ちこぼれ』を装う学生。それが同一人物であると知って、彼女はどう思ったのだろうか。聞くのは怖いが、今聞かなければ後悔する気がした。次に彼女とこうして会話ができるのは、何年後になるかわからないのだから。「幻滅なんて、するわけがないですよ」彼女は苦笑した。サキカの不安を吹き飛ばすかのように。「逆に安心しました。……総帝様のマントの下が、サキカ君で」──実は怖い人だったりしたら、とか思ったこともあったんですよ。小さく笑う彼女に、サキカも笑んだ。──長い間抱き続けていた不安。もし、正体を知られてしまって、彼女たちに敬遠されてしまったらなんて、編入した時から考えていた。しかし、そんな不安は杞憂だったのだ。.