冬の厳しさはより勢いを増している。盆地である京の冷えも一段と厳しく、戦に明け暮れる者達を咎めるかのようであった。「せいっ!せいっ!」早くなった日の入りが作る影の中、侘茶屋の庭去除黑眼圈身体を鍛える隆行の元には、相変わらず、推薦状は届く気配も無い。「ふー。」ひとしきり身体を動かした隆行は縁側に座り、手拭で汗を拭きながら一人考え事をしていた。あれからも京の都に行き続け、一人で治安維持活動を続けていたが、一件の事件と遭遇しただけで、そこでも推薦状は貰えなかった。(考えを改めた方が良いかな。)重盛から言われた期限は一年である。この方法が駄目であれば、次の手を打たねばならない。(素直に仕官しに行こうかな。)弱気な意見が頭を過ぎる。(いや、いかん。まだ時間はある。やっぱりこの手だ。)隆行は、弱気になる自分を戒めるように立ち上がると、飯を食い、着替えをして夜の都へと向かって行った。