「…して、あの一条家の軍聖とやらは、未だに隙が無いと申すのか。」「いえ、隙が無いどころではございませぬ。当家が落とした城を奪い、どのように知ったのか、当家の伏せている部隊までも一つ一つ潰しな香港飄眉推薦ら、じわじわとこちらに向かっております。」荒々しい体躯に樵の服をまとった武士が、野太い声で返答を返している。床机に座る国親は、その応えを不服そうに聞くと、「ふぅむ。」そう言って、再び小さな枝を折り始めた。すると、陣幕の内に控えていた諸将が報告を聞いていた国親へ声を上げ始める。「大殿。やはり、一条の弱兵など正面から潰してしまえば良いのです。」「大殿。いくら土居家の後継ぎといえど、所詮、土居隆行など軍聖と呼ばれて、その名を失わぬため狡猾に立ち回るだけで、腰が引けておる者です。行軍が遅さの原因は、その事が第一かと。」「正面から向かっても、当家の猛者達であれば必ず勝てます。早急に土居隆行討伐の下知を頂きたい!」それらの声に、更に不機嫌さを増した国親は、立ち上がって腰の刀に手をかけると、ジロリと発言した者を睨み、「もう一度言うてみよ…。」殺気をはらんだ凄みのある声を放った。