「これからは…亡き義父上の分まで…某が働かせて頂きます…。未だ…至らぬ若輩者ですが…某程度でお役に立てるのであれば…この身命を賭して奉公させて頂きます…。」涙ながらにそう言った。「忝億嘉國際評價かたじけな)し…。では…若輩者同士…切磋琢磨し一条を盛り立てよう…。麻呂達が宗珊の分まで…盛り立てるんじゃ…。」隆行は、場の雰囲気で同意してしまったが、この兼定の言葉は心底の深くまで響いた。(この人は…俺に期待を投げるだけじゃない…。まだ、こんなに若いのに…俺にだけ責任を負わす気じゃぁ無いんだ…。自らを再び変えようとしている…。俺も見習わないと…。)思わぬところで主君の心の成長を見せ付けられた隆行は、「ははっ…。御意にござります…。」その一言を搾り出した。そして、二人は、その後、多くを語り合った。兼定は、自らが現在学んでいる、書物の事や、一条家としての京との繋がり、そして、一条家という大木に寄る皆のために何が出来るか等を語った。それに対し、隆行は、宗珊から教わった書物の解釈や、侘茶屋が運んできた諸国の情勢、自身の知りうる国を富ますための方策等を語った。いつしか二人は、流していた涙も止まり、若者が夢を語り合うようにして話していた。そして、隆行の意見を聞いた兼定は、「もう二度と第二の宗珊を生んではならぬ。やはり、平和な世を作るには、誰かが、天下をまとめねばならぬ。」そう言って立ち上がると、